2023/09/08


東芝製7189Aプッシュプル 真空管パワーアンプ


初めて真空管パワーアンプを購入しました。

今までは真空管パワーアンプは
自作するか、友人から譲って頂いていたので、
完成品?を購入した事はありません。




今回はヤフオクで購入した50年程前の自作品です。

出力管は東芝製の7189A、
ドライブ球は6AN8でした。

電源トランスはサンスイの
「PV180」という180VAの容量、
出力トランスもサンスイの
「SW−30−8」という
30Hzで最大30W,
P−P間の負荷抵抗が8キロオームという
7189A用です。

嬉しい事に
「LEAD」製のボンネット付きのシャーシです。

ボンネットがあると真空管を壊す心配もなく、
持ち運びも便利で安心です。

AC電源プラグが切断されていたので、ACジャックに変更しました。




この状態で電源を入れた処、
バイアス電圧が規定値より以上に低く、
全体に異常に熱かったので、

バイアス電圧を規定値のー15Vにして
周波数特性とノイズレベルを測定しました。






まず周波数特性ですが、

8オーム時1Wで測定です。

高域は50KHzから90KHzにて6db上昇し、
低域は5Hzにて3db上昇していました。

ノイズレベルは0.5mV位ですが、
フリッカーノイズが多いです。



7189と7189Aのハンドブックからのデータです。




7189と7189Aとの違いは、
スクリーングリッドG2のピンの本数が7189Aは2本出ています。

これによりG2の冷却を多くして損失電力を増やす事が出来ます。

動作条件は全く同じですね。


そこでプレート電圧400V,
スクリーングリッド電圧300V、
固定バイアス電圧がー15V
負荷抵抗はP−Pで8キロオーム、

出力は24Wで動作をさせます。








そこで、ドライブ回路は、
6AQ8を2本使用した差動2段回路に変更する事にしました。

こうすれば6AN8のような5極管と3極管との複合管による
低域時定数が総合4か所となるのが2か所に減るので、
低域の位相回転によるNFBの不安定要素が減ります。


それとB電源部は、
7189Aのプレート電圧用の400V
7189Aのスクリーングリッド用と、ドライブ回路2段目の供給電圧の300V,
ドライブ回路の初段用の200Vは、
左右別のトランジスタによる定電圧電源とします。

7189A用の4個の固定バイアス電源と、
ドライブ回路初段用の定電流回路用の、
−24V電源を左右別に製作します。


まず、シャーシから部品を全て外し、
シャーシに沢山のラグ板やパワートランジスタ用の穴を開けました。


出力管の7189Aは高温になるので、
シャーシに放熱用の穴を開けました。





電源トランスのPV180のB電圧ですが、
半波倍電圧整流回路なので、
電圧の低い大容量の電解コンデンサーが使えます。

そのため
250V1800マイクロファラッドを4個使用しました。
但し、ラッシュカレントが大きいので、15オーム5Wの抵抗をパラレルにした保護抵抗を入れました。






取り外したトランスと、
新たな電源コンデンサー、
出力管7189Aと、
4本の6AQ8を取り付けました。

尚、前側の9ピンソケットは手持ちの関係で不揃いです。

前面は、ボリュームを取り外し、入力のRCA端子も交換しました。








スピーカー端子も交換し、8オームのみとしました。

電源は3Pのインレットです。




まずヒーターの配線とB電源部の配線です。



出力管7189Aは、相当熱くなるので、

あえてヒーターの配線は別々にして、ラグ板に配線して放熱を考慮します。

7189Aから7189Aにヒーターの配線をすると、放熱をしないので、球の寿命が短くなりますね。






ヒーターが点灯しました。










左下の基板は、
バイアス電源とドライブ段の初段用の定電流回路用の
左右別のー24V電源です。

左上は、
B電源の430Vと
左右別の7189A用の400V定電圧電源。

中央は、左右別の300V定電圧電源。

7189Aのソケット付近は、4本別バイアス回路。




右別の200V用定電圧電源と、
7189Aの配線が完了。

7189Aは出力トランスの2次側にカソードNFを掛けたので、
発振器とミリバル・オシロで波形とゲインを見ながら
出力トランスの1次側に補正を入れました。




ドライブ回路を接続して8オーム端子にてゲインが26dbになるようにNFB抵抗値を調整しました。

周波数特性は8オーム1W時で
低域はほぼ5Hzまでフラット、
高域は90KHzで+6dbの持ち上がりがあったので、
高域補正を入れて、
90KHz−3dbとし、それ以上は大きなピークはありません。












試聴です。

20W×2とハイパワーではありませんが、
左右別の定電圧電源のため、
左右のセパレーションが良くて定位が良く、
音離れが大変良いです。

超低域まで低域が伸びているようで、
生録の空調音も再現します。

さすがに生録の吹奏楽では出力管を傷めるクリップが怖いので、
大音量は上げませんが、音の伸びは良いですね。





以下の画像は測定した歪です。

ノイズは入力ショートで0.15mV
ノイズ成分はハムです。





こちらは最終の回路図です。

ヒーター以外はすべて定電圧電源にして、
歪の多い5極管なので、カソードNFを掛けて
歪特性と周波数特性を改善しました。

NFBを掛ける前の8オーム端子での裸ゲインは36dbで、
カソードNFBで6dbゲインが減っているので、実質は42db。
これに10dbのNFBを掛けています。

ドライブ回路の差動2段によって歪を減らしているので、
トータルNFBが少なく安定したアンプです。

カソードにカソード電流値を見るために
10オームの抵抗を入れているので、
これとカソードNFBのスピーカー端子の抵抗値を含めて105mVとし、
7189Aにプレート電流とスクリーングリッド電流を含めて10mAとしました。

パワーアンプ全体で
アイドリング電力は70W,
2chフルパワー時(20W×2)は160Wです。





当方としては球アンプでやりたかった事を全て行ったので、
次にまた球アンプを作りたいとは思いません。

やはりグリッド鳴きは聞こえますし、
ハイパワーにしても片ch100W以上は簡単には出せません。

それに出せても大変大きく重くなり、消費電力も
パワー以上に増えます。

それなら
手持ちのトランジスタの自作モノラル300Wのアンプ

があり、
電源部に部品代で数十万円は掛かっているので、
これを超えるアンプの製作は無理です。